スーツの歴史 ベストの誕生からラウンジスーツまで
こんにちは大分です。
最近のスーツのトレンドと言えば、クラシック回帰ですよね。
ただ、皆さんはクラシックなスーツと言われた時に何を思い浮かべますか?これって、スーツの歴史を知らないとわからないですよね。
そこで今回はスーツ誕生の歴史を紐解いてみたいと思います。
そもそもスーツって何だ?
スーツの歴史を遡るには、スーツスタイルを定義しなければ始まりません。英語のsuitには皆さんご存知のように、「ひとそろいの」という意味があります。なにが揃っているかと言うと、上着(ジャケット)、ズボン、ベストの3つのアイテムが同じ生地から作られているということです。実はこの「同じ生地から作られている」ことこそがスーツ最大の特徴です。
どういうことかと言いますと、「スーツ」誕生以前から男性の服は上着、ズボン、ベストの3つとシャツという構成だったのですが、その生地はどれも違ったものを使っていました。上着、ズボン、ベストの3つのアイテムに同じ生地を使ったのは、現在の「ラウンジスーツ」が初めてです。
そこで今回は上着、ズボン、ベストの歴史とラウンジスーツ誕生までを紹介したいと思います。
ベストの誕生
現在の3ピーススーツ(ジャケット、ベスト、パンツの3点からなるスーツ)を構成するアイテムの内、最も長い間姿を変えていない古株はベストです。ベストの登場は1666年10月7日まで遡ります。
今回登場するアイテムの中で、登場した日付がここまで明確なのはベストだけです。なぜベストの登場した年が1666年であると断言できるかと言うと、ベスト(vest)という名称をこの年に当時の英国王であるチャールズ2世が発表し、その着用を貴族に命じたためです。
その当時の貴族はどのような服を着ていたかというと、このように個性的で豪華な装いでした。
しかし、当時国の財政には余裕がなかったため、チャールズ2世は倹約の方針を打ち出しました。そのうちのひとつが、服装の統一だったのです。そして、この時生まれた上着、ベスト、ズボンのスタイルは現在まで続いています。
半ズボンから長ズボンへ
ベストの登場から1世紀ほど経った18世紀に男性のズボンの形に大きな変化が訪れます。まず当時のズボンの特徴を見てみると先程の写真でもそうなのですが、18世紀初頭まで男性のズボンの丈は今と比べると短くなっています。
この理由は、中世のころからふくらはぎは男らしさの象徴だったようで、詰め物などで大きくしたふくらはぎを強調するために短い丈のブリーチーズ(breeches)というズボンが主流だったそうです。
この半ズボンに起こった変化というのは、タイトルにもあるように、長ズボンへの変化です。この変化には当時の文化的な流行が関わっていると考えられています。それが新古典主義と言われるギリシア芸術の見直しです。とりわけ当時の理想の男性像に影響を与えたのは写実的な古代ギリシアの彫刻でした。その結果として、誇張したふくらはぎは隠された長ズボンが生まれたのです。
ラウンジスーツの誕生
ここまでベスト、ズボンと写真を使いながらその歴史を紹介してきてお気づきの方もいらっしゃるかと思いますが、男性の洋服の上着はずっとコートです。
この写真はフロックコート(frock coat)と呼ばれるもので、昼間の正装として着用されていました。もともとは地方の貴族が地元で生活する時に着ていたもので、暗い色やウールを素材として使用している点は現在のスーツとも同じです。
こちらはもともと昼の略式的な服として着られていたモーニングコート(morning coat)です。フロックコートに比べて前の丈の長さが短いので乗馬に適していました。当初は乗馬向けのコートでしたが、その後フロックコートに代わり、昼の正装の地位に昇りつめます。
これらのコートを着るのは堅苦しい外出先ですが、寛ぐための服として19世紀末に生まれたのがラウンジスーツ(lounge suit)です。貴族の室内着やスポーツ用などとして生まれたと言われ、その後労働者も着るようになったことでポピュラーな服となりました。日本ではラウンジスーツという言葉は使われませんが、今でも英語圏ではドレスコードの1つとして濃い色のスーツを表すようです。